息子の思春期

小学校4年生の息子が思春期に入った。



最近の息子は、

私が「出したものはしまっておいてね」というと、チッという態度をするようになっていた。

今までの私と息子のじゃれ合いの流れで、

「チッてどういうことだよ~。おら~。」

と、私が息子にちょっかいを入れる。

今までだったらそこから息子が笑い、空気は明るくなる。

が、”本気の彼”の時が多くなってきた。

そして昨晩、

「そんなにいうなら、自分でやればいいだろ・・・」

と、彼がボソッと吐き捨てるように言った。


!!!!!!!!


”いや、出したのはお前だろ!お前がやるべきことだろう!おい!”


思わずカッチーン


「自分がやればいいだろうってどういうこと!あんたが出したんでしょ!

もう怒った。マジむかつく!もうあんたの箸セットなんか洗わないから!」





2週間ほど前も、こういうような理不尽な対応に一度私がキレ、

私の気持ちが少し落ち着いたところで、私は彼と話した。

『私がどんな気持ちになったのか』を。

彼は聞いてくれ、いつもはその後に仲直りをして抱きしめあって終わるはずが、

今回の彼は、号泣しだしたのだ。

!!!!?????????

いつもと展開が違う・・・

私は戸惑った。


私は仲直り直前、彼に、「あなたのおこずかいで私にクッキー買って!ケーキ屋さんで売ってるおいしいやつね。そうしたら許してあげる。」

と甘え、彼は「いいよ」と言ってくれたのだが、その後に彼は号泣しだした。

だから私は「クッキー買ってが嫌だったの・・・?」と尋ねたが、そうではないようだった。

他に思い当たることが無かったので、私は彼に、今はどういう気持ちで涙が出てきているのか尋ねてみた。

すると彼は、「言いたくない」と応えた。


うううん・・・・

何かが彼の中でいつもと違う・・・



その後、数日彼を観察していた。

学校から帰ってきてからは、いつも通り友達と楽しく遊んでいる。

友達と何かあったのでは無いようだ。

学校も普通に行っている。

とりあえず、大丈夫そうだ。



そして昨晩、2度目の『母ブチ切れ事件』が起こった。

晩御飯直前の出来事だった。

私はあまりに腹が立ったので、彼の晩御飯はキッチンに置いたままで、

自分のと娘との分だけを用意してダイニングテーブルで食べ始めた。

その後の展開をどうすればいいのか、頭の中はフル回転だった。

私がキレた直後はゲームをしていたが、しばらくすると彼は自らゲームを止め、

彼担当のお風呂掃除へと向かっていった。

私は聞き耳を立て、彼の心の状態を探っていた。

お風呂掃除には行ったものの、動いている様子がなかった。

泣いているのか、落ち込んでいるのか、怒っているのか・・・


少し心が切なくなった私は、彼が居ない間に、彼の晩御飯を用意した。


お風呂場の空気が止まったままだったので、私は彼と話そうと、お風呂場へ向かった。

しかしその時に電話が鳴りだし、私はそのまま電話へと引き返した。


私が電話をしている間、家の中の空気が少し変わり、彼もお風呂掃除を済ませ、

ダイニングで晩御飯を食べ始めた。


電話が終わり、彼と向かい合って私も晩御飯を食べ始めた。

また私も怒りが残っていたので、彼の顔は見ないようにしていた。

しかし、彼の心の状態が知りたくて、時々チラ見をした。

泣いてはいない。目も、泣いた後のようにはなっていない。

しかし、彼からは悲しいような切ないような感情が伝わってきた。

私はその時にハッと気づいた。


親から言われた言葉に、妙にイラ~っとした感情が内側から込み上げてくる感じ。

当たりたくないのに、当たらずにはいられない持て余す感情。

そしてその後にくる後悔の念、母を悲しませた自分への苛立ち。



私は納得がいった。

そして私の中にあった息子への怒りが吹き飛んだ。



晩御飯を食べ終わった息子は、お風呂に入りに行った。

息子とゆっくり話せる場所はここしかない!

私も後を追いかけるように慌てて服を脱いだ。


お風呂の中で私は彼に、

「今日はごめんね。ママ、やっと気づいたよ。あなたはママが言う言葉に、なぜかイラ~っとする感情が内側から込み上げてくるんじゃない?」

そう質問すると、彼はうなずいた。

「それってね、思春期に入った証拠だよ。これから男の子らしくなっていく為の自然な変化だよ。自分ではどうにも抑えられなくて、感情を持て余しちゃったりするの。でもそれは、それでいいんだよ。成長している証拠だから。」

すると彼は顔を上げ、私の目を見た。

そしてその目には涙が溢れていた。

「みんな通る道。パパもママも経験してきたよ。自分ではどうにもならない感情だった。男の子は特に、力のセーブがきかず、家に穴をあけちゃうこともあるくらいだよ。ママのお兄ちゃんも家に1個穴をあけたよ(笑)。パパの弟も穴をあけたんだって(笑)。

だから大丈夫だよ。今のままで大丈夫だよ。」

また彼の目に涙が溢れた。

「家族に影響することはママ、これからも言うね。例えば、家の中の片づけとか。

これはやってもらわないと、家の中がどんどん汚くなっていっちゃうから、困るから。でも、あなただけの問題、例えば宿題とか。それはあなたの問題だから、今までも口を出してこなかったけど、今まで通り、自分の頭で考えてね。それはあなたに任せてあるから。」

彼はうなずき、お風呂を出ていった。


きっと彼は自分でも苦しかったんだと思う。

私が自分を責めたように、彼も自分を責めていたんだと思う。

お風呂を出る時の彼の目は、どこかホッとしたような感じの印象を受けた。

私はとても彼の成長がいとおしかった。



しばらくすると、遠くから彼の鼻歌が聞こえてきた。

よし、もう大丈夫だ。

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